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はじめに

計算機システムは、現在に至るまで急速な性能向上を続けてきた。 計算機の高性能化が新たな利用機会を生み出し、 新たな利用機会が計算機の更なる性能向上を促すという循環は、 今も衰える様子を見せない。 特に、性能向上のために複数のプロセッサを搭載する構成を持つ 並列計算機に対しては、この傾向が顕著である。 最近では1つのチップ内に複数のプロセッサを搭載した オンチップマルチプロセッサがさまざまな用途で用いられるように なってきている。

並列計算機開発者は、利用者の要求に応えるために、 高い性能を持つ計算機をなるべく短期間で開発しなければならない。 そのため、実装前段階で性能予測を行い、どの程度の性能が得られるかを なるべく正しく予想することが重要である。 この性能予測手法として精度が良く柔軟性が高いのが、 ソフトウェアシミュレーションによる性能予測である。

これまでに数多くのシミュレータが実装され、 性能評価システムとして使用されてきた。 しかし、近年の高性能なプロセッサを詳細にモデルし、且つ、 あらゆる構成のマルチプロセッサシステムを簡単に構築できる シミュレータが存在しないという問題点があった。

Winsconsin大学のSimpleScalar は、高性能なプロセッサの詳細なモデルを提供しており、 シングルプロセッサシステムやプロセッサアーキテクチャの検証に 広く利用されているが、マルチプロセッサシステムの シミュレーションに対応していない。

本研究室で開発されたISISは、 汎用的な部品をライブラリとして提供しているためシミュレータの実装が 比較的容易である。しかし、近年主流となっている多重命令発行、 out-of-order実行、分岐予測などをサポートしたプロセッサを 提供していない。

そこで、SimpleScalarが提供する高性能なプロセッサの シミュレータをマルチプロセッサシステムシミュレーションへ対応させ、 ISISによって記述されたシステムと接続できるようにした。 ISIS-SimpleScalarを利用することによって、 近年の高性能なプロセッサを搭載したあらゆる構成の マルチプロセッサシステムのシミュレータを比較的容易に 構築することができる。

ライセンス

ISISおよびSimpleScalarに準拠する範囲で、ご自由にお使い下さい。



Toshiya Minai
平成17年2月1日